企業格付改善対策 金融機関が行う企業格付と改善対策

 資金調達方法が限られる多くの中小企業にとって、金融機関からの融資は欠かせないものです。
しかし、昨今、金融不安の煽りを受けて、必要な融資を受けられなかったり、逆に返済を迫られたり、企業格付の見直しを理由に金利の引き上げを迫られたりと中小企業の資金調達は厳しいものとなっています。

 「利益は出ているのに融資を断られた」「大きな商談がまとまって数ヵ月後に入金になるのに手形の書き換えに応じてくれなかった」等、融資を断られるケースは後を絶ちません。

 金融機関は、様々な側面から企業をみて融資するかどうかを決定します。その中で最大の根拠となっているものが「企業格付」です。

 本レポートでは、金融機関が融資を決める際に決算書のどこを見るのか、金融機関と対等のビジネスパートナーとして付き合っていくための財務体質強化のポイントについて解説します。

(1)企業格付の概要と目的
 企業格付とは、金融機関がつける企業の“内申書”のようなものです。具体的には、各金融機関が取引先企業の今後3~5年間における信用力をスコアリングして10~15 項目に分類することで、各金融機関が独自のスコアリングシート(得点表)を使用して、最低年1回、企業の決算書を受け取った際等に行われています。

 企業格付は、金融機関が負う「信用リスク」、つまり、取引相手の契約不履行により、債権が期日に全額回収できなくなるリスクを的確に管理する体制を構築するために行われます。また、金融機関の自己査定により、企業は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5段階にランク付けされます。要注意先の中でも悪い方の企業は「要管理先」となります。

 この自己査定により、金融機関は「要注意先」以下とされた企業への融資を絞ります。要注意先に分類された企業は、融資が受けにくくなったり、金利の引き上げ要請が来たりしますので、中小企業にとってはまさに死活問題となります。

 したがって、要注意先にならないように対策をとっておく必要があります。

(2)格付は「定性評価」と「定量評価」で行われる
 金融機関の格付は「定性評価」と「定量評価」で行われるのが一般的です。その割合は都市銀行、地方銀行、信用金庫などによって異なりますが、ある地方銀行の場合、概ね定量評価が70%、定性評価が30%となっています。
定性評価は、市場動向、競合状況、経営者・経営状態、営業基盤などを評価します。この定性評価で注意が必要なのは、ネガティブチェックです。財務資料の信憑性が薄い、資料提出を渋る、資金使途違反がある、中小企業倒産防止共済に加入していない、などは確実に減点されます。


 定量要因の項目の中で、自己資本や利益に関する項目が多くなっています。
つまり、格付を向上させるには、自己資本や利益を増加させるための取り組みが必要といえます。
しかし、売上高や自己資本額、キャッシュフロー額は、中小企業にとっては基準が高く、点数を稼ぎづらい項目となっていますので、それ以外の項目を改善していくしかありません。

 また、一般的に都市銀行よりも地方銀行や信用金庫の方が、同じ財務内容であっても格付が上になることが多くなっています。それは、一般的に都市銀行はほぼ100%が定量要因ですが、地方銀行だと多くの場合、定量要因の割合は70%程度、信用金庫になると60%程度になるため、数字以外の定性要因も大きな要素となるからです。

 金融機関は、企業から提出された決算書を徹底的に分析します。しかし、金融機関が重点を置いて見るポイントはある程度決まっていますので、金融機関が決算書のどこを見るかがわかれば、金融機関に対する説明準備や今後の計画作りにも役に立ちます。

 この説明ができないと「この経営者は自社の決算内容も良く分かっていない」と烙印を押され、受けられるはずの融資も受けられない可能性もあります。
金融機関が見るポイントは、自社の経営改善に不可欠なものですので、金融機関のためではなく、「自社の経営改善のため」というスタンスで取り組むべきです。

■貸借対照表のチェックポイント
①流動資産や当座資産と流動負債のバランス(流動比率、当座比率)
②売掛債権に回収不能な債権が含まれていないか
③棚卸資産には不良在庫がないか
④利益を上げるために棚卸資産を操作した可能性はないか
⑤役員に対する貸付金や仮払金がないか
⑥貸付金や仮払金で回収不能な債権がないか
⑦減価償却はされているか(償却不足はないか)
⑧土地・有価証券に含み損はないか
⑨借入金が急激に増加していないか
⑩固定資産と固定負債・純資産のバランス(固定長期適合率)に問題はないか
⑪自己資本の増減(自己資本比率の増減)に問題はないか
上記の項目で、売掛債権、棚卸資産、貸付金、仮払金、固定資産、有価証券などを正しい数値に置き換えて、実態貸借対照表を作成すると、真の純資産額が算出されます。もし、純資産額がマイナスとなれば「実質債務超過」と判断され、融資を受けることは非常に厳しくなります。

 特に貸付金や仮払金は役員に対するものは厳しく見られます。役員報酬などを利益確保のため費用とせず貸付金や仮払金として処理している場合は、実体がない資産とみなされて純資産額から控除されますので、注意が必要です。

 損益計算書では、売上高や営業利益、経常利益の増減はもちろんですが、売上原価や販売費及び一般管理費(以下販管費)のコストダウンを行っているかについても厳しく見られます。
 売上の増減要因や利益の増減要因が何であるかをきちんと金融機関に説明できるようにしなければなりません。
もし、売上が減少し赤字になっているのに、人件費や販管費の削減努力が見られないと心象を悪くします。特に役員報酬削減に手が付けられていなかったり、役員賞与が払われているときは、金融機関にかなりのマイナスイメージを持たれることになります。

■損益計算書のチェックポイント
①売上高の増減
②営業利益・経常利益の増減
③営業利益率・経常利益率の増減
④売上原価(製造原価、工事原価)の増減
⑤販売費及び一般管理費の増減
(特に増減の激しい科目はないか、コストダウンの努力はあるか)
⑥役員報酬

 金融機関は決算書から上記のような項目をチェックし、その要因を必ずヒアリングします。それに対する回答がきちんとできるようにしなければなりません。金融機関は、企業に融資するとき、融資した企業が返済する能力があるかを判断して融資の実行を行います。
その判断基準の一つが「債務償還年数」と呼ばれるものです。債務償還年数は「借入金÷キャッシュフロー(当期純利益+減価償却費)」で計算され、現在の借入金を何年で返済できるかを見ます。
企業格付の基準例で見ると、マイナス(赤字決算)であれば0点、20 年超が1点、15 年超20 年以下が2点というような点数になります。金融機関が目安としているのは10 年ですので、10 年を超えているようであれば、対策が必要です。

 企業格付は、企業にとってとても重要な意味を持ちます。格付対策が、企業の資金調達のカギを握るといっても過言ではありません。
企業格付が企業の資金調達に及ぼす影響には、次のようなものがあります。
①融資の可否 ⇒ 格付が良いほど、希望通りに確実に融資を受けられる
②金利 ⇒ 格付が良いほど、より低い金利で融資を受けられる
③担保・保証 ⇒ 格付が良いほど、無担保・無保証で融資を受けられる
格付が悪いと、上記の逆で、融資が受けにくく、金利も高く、担保・保証の水準も高くなるため、それが企業業績を悪化の方向へ向かわせる要因となる悪循環となってしまいます。それだけ、格付対策は企業経営にとって重要なことなのです。

格付を改善するには「短期的取り組み」と「長期的取り組み」が必要です。
(1)短期的取り組み
①利益の社外流出を止める
 短期的取り組みは、まず利益の社外流出を止めることです。いくら売上増加の取り組みを行っても、赤字を垂れ流していては元も子もありません。「固定費の削減」「変動費率の改善」を行い、利益を確保し利益率を向上させることが最初に取り組むべきことです。
固定費の削減は、金額の多い項目から削減することが鉄則です。その中でも、費用対効果の低い科目から着手します。
具体的には、総勘定元帳を見て一つひとつ点検していきます。地道な作業ですが、固定費削減のためには不可欠な作業です。例えば通信費の内訳を見て、携帯電話の基本料金や通話料金、固定電話の通話料金などを詳細に点検します。
また、人員の見直しも必要な場合もあります。部門や営業所ごとに人員効率や個々の能力等を見て判断します。

②流動資産の正常化
 次に手を打つのは、「売掛金の早期回収」「貸付金の回収」「仮払金の精算」です。売掛金の長期滞留は資金繰りを悪化させるばかりでなく、貸し倒れなどのリスクを伴います。管理表などでしっかりと管理して、早期回収を図ります。「貸付金」「仮払金」については、特に役員に対するものであれば早急に回収・精算をすべきです。前述の通り、金融機関はこのような点をしっかりチェックしています。

③役員借入金の資本振り替え
 役員からの借入金があれば、資本に振り替えてしまうか、債権放棄をして債務免除益を出して、自己資本の充実を図ることも有効です。これにより、自己資本比率が向上するだけでなく、債務償還年数も短くなります。

(2)長期的取り組み
 長期的取り組みは「売上高増加」「利益額確保」「利益率向上」などの収益性改善項目と、「在庫の圧縮」「遊休資産の処分」「有価証券の処分」「有利子負債の圧縮」「自己資本の充実」などの財務体質の改善があります。
財務体質の改善の中には、「有利子負債の圧縮」や利益増加が前提でなければ改善できないものや、「自己資本の充実」のように改善には時間がかかるものもありますので、しっかりとした計画を立てて着実に改善していく必要があります。

①収益性改善
 収益性を改善するには、まず売上高、利益額、利益率の部門別・担当者別分析から始めます。どの部門、どの担当者が会社に貢献しているのか、あるいは貢献が少ないのかを見ることで、今後、収益改善のために強化すべき点や改善すべき点が見えてきます。
これらを踏まえてどの商品、地域、部門で売上を増加させていくかを、経営計画に落とし込みます。
また、経営計画が単に数字の羅列で終わっていては、金融機関の信用を得ることはできません。計画達成のための活動計画を作成し、具体化しなければなりません。

②財務体質改善
 経営計画というと、損益計画だけに終わってしまう企業もありますが、損益計画だけでは不十分であり、その計画によって会社の財政状況がどのようになるのかについても、経営計画に盛り込むことが理想です。金融機関はその経営計画によって、融資をどの程度回収できるかを把握したいと考えています。
よって、損益計画の他に、計画貸借対照表、計画キャッシュフロー計算書、借入金返済企業格付改善対策 金融機関が行う企業格付と改善対策計画があると、金融機関が把握したい情報をすべて網羅したことになります。
借入金返済計画には、返済財源が確保できていることがポイントです。もし、利益と減価償却とで返済できなければ、どのように返済財源を調達するのかを明確にし、金融機関との交渉に臨まなければなりません。

決算終了後に決算書を金融機関に提出した後や、新規融資を申し込んだときに経営計画の提出を求められることがあります。経営計画の提出を求められるのは、赤字が2期連続であったり、繰越利益剰余金がマイナスであったり、実質債務超過であったりする場合がほとんどです。

金融機関は常に融資が着実に回収できるかどうかを決算書で判断し、現状では回収が難しいと判断すれば、今後どのように経営改善を行い、返済をしていくかを知りたいのです。それだけ金融機関は、経営計画の作成・提出を重要視しているのです。
経営計画の提出を求めても一向に提出しようとしなかったり、試算表の提出を求めてもなかなか出さず、やっと出てきても数ヶ月遅れのものであっては、金融機関は融資を続けていいのかどうかの判断ができません。また、金融機関の心象を悪くすることになります。
経営計画を作成しても、単なる損益計画だけでは、金融機関はほとんどその内容を信用しません。
その計画をどのように達成するのか、計画を達成したときにはどのような財務内容になっているかが分からない経営計画であれば意味がありません。経営計画には具体性が求められるのです。

経営計画に盛り込むべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。
①中期経営改善方針
②中期損益計画(向こう5年間)
③中期計画貸借対照表
④中期キャッシュフロー計画
⑤販売計画(どこに何を売っていくのか)
⑥人件費・固定費計画
⑦変動費計画
⑧借入金返済計画
⑨活動計画(中期、年度)
ここで注意していただきたいのは、経営計画は自社の経営改善のために作成するのであって金融機関のために作成するものではないということです。したがって、提出して終わりではなく、どのように計画通りに実現するかが重要です。




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