収益性改善の進め方

1. 自社の収益改善ポイントを整理する

収益性悪化の要因は以下のようにまとめることができます。
自社の収益改善のために何をすべきかをここで整理しておきます。
 
① 経常利益減少の要因
  支払利息の増加、固定費の増加、変動費率の上昇、売上高減少
   
② 営業利益減少の要因
  固定費の増加、変動費率の上昇、売上高減少
   
③ 限界利益減少
  変動費率の上昇、売上高減少
   
④ 売上高減少
  販売数量の減少、販売単価の低下


業績悪化の要因は上記の4点となりますが、ここで注意すべきなのは、売上高が増加していても利益が減少する場合もあるということです。たとえば、新規事業を行うために人員を増員したり、設備投資を行っても、売上高がそのコスト増を賄うだけの金額を確保できない場合もあります。

以上の観点で自社に必要な収益改善のポイントを検討していきます。
収益改善では、固定費の削減、変動費の削減、売上高の増加が3大ポイントとなります。
自社にとって、どの項目が当てはまるかを整理して、適切に改善していくことが必要です。



2 売上高を増加させる短期対策

(1)営業力を強化する
営業活動がなければ、商売は成り立ちません。したがって、売上高を増加させるためには営業力の強化が不可欠となります。
営業力は「量」と「質」の両面から営業マンを分析して、しかるべき手を打ちます。

 ① 営業マンの行動を点検する
  まず最初にすべきことは、営業マンが決めた方針通りの活動量が確保できていたかを点検します。これには、営業日報の活用が効果的です。
営業日報に記載されている訪問記録などから、どの顧客からどのような情報を仕入れて、今後の営業活動にどのように活かすのかを確認します。
営業マンが、「書く時間がない」「書くことが苦手」「書く内容がない」と言い訳するのは、「手抜き営業が日報でばれてしまうことを恐れての言い訳でしかないのが実情です。
また、営業日報の形も重要です。顧客の反応を書く欄がなければ、営業マンも書こうとは思いません。次のようなフォーマットを参考に手直しをしてください。
   
 
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 ② 営業マンの能力の棚卸しをする
  営業成果は営業の量だけではなく、営業の質も重要になってきます。営業の量が確保できたら、今度は営業マンの質を向上させなければなりません。
そのためには、まず営業マンに次のような職務基準書を基に、各営業マンの棚卸しを行い、職務レベルを明確にして、不足を補うための育成計画をたてることが必要です。
   
 
 
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(2)マーケティング力を強化し顧客ニーズを正確につかむ
 ① 顧客ニーズをつかむ
  「顧客ニーズは常に変化する」という「真理」を忘れると売上が落ちてきます。常に顧客のニーズを把握する努力を怠ると、主力商品が時代遅れであることに気がつかず、ポスト主力商品の開発が遅れてしまいます。そうなると、売上が落ち込み始めてから慌てても手遅れです。
営業マンは顧客に最も近い立場にいますので、販売のみならず情報収集の役目も担っています。会社の未来がそこにあるといっても過言ではありません。顧客のニーズが何であるのかを的確に把握しなければ、努力も水泡に帰してしまいます。
そこで、企業としてのマーケティング力の強化が必要となります。
「マーケティング」という言葉から「マーケティング」=「販売」を連想する人は多く、よく混同されて使われます。
「販売」の考えの出発点は工場です。そして売ることとプロモーションを手段に、売上数量拡大による利益獲得を目的としています。つまり、「いかに売るか」を考えます。
一方、「マーケティング」の考えの発想は市場です。そして「顧客ニーズ」に注目し、顧客満足による利益獲得を目的としています。つまり、「いかに満足を与えるか」と考えるのです。
P.コトラーは、マーケティングを、「価値を創造し、提供し、他の人々と交換することを通じて、個人やグループが必要(ニーズ)とし、欲求(ウォンツ)するものを満たす社会的、経営的過程である」と定義づけしています。
マーケティングコンセプトとは、選択した標的市場に対して競合他社よりも効果的に顧客価値を生み出し、供給し、コミュニケーションすることが企業目標を達成するための鍵となる、という考え方(概念)です。
   
 
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  しかしこれだけでは、マーケティングは成立しません。買い手は「貨幣的な価値」を提供し、売り手は「満足という価値」を提供することになります。つまり、マーケティングは、価値交換過程であるといえます。
また、マーケティングの概念は、時代とともに変化をしており、その変遷は以下の通りです。
   
イ) 生産志向コンセプト
  生産効率の向上と広範な流通に努力を集中し、企業にとって合理的な経営の実施を重視する考え方。需要が供給を上回っているときに当てはまります。
   
ロ) 製品志向コンセプト
  良い製品を作ることと常にその改良を行うことにエネルギーを集中するという考え方。顧客のニーズよりも、製品に関心を向けています。
   
ハ) 販売志向コンセプト
  消費者は放っておいたら、製品を買わないので、消費者に対し、攻撃的な販売とプロモーション努力をする。(マーケティング=販売)という考え方。
   
ニ) マーケティング志向コンセプト
  企業目的の達成のために、ターゲット市場のニーズやウォンツを明確にし、望ましい顧客満足をより有効に能率よく提供するという考え方。市場からニーズをつかみます。
   
ホ) 社会志向コンセプト
  企業の利益と、消費者の満足、社会の利益との調和を図っていく考え方。
   
  【マーケティングの変遷】
 
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(3)顧客満足度を高める
カール・アルブレヒトによると、顧客が求めるサービスのクオリティには4つの段階があるとされます。
これに基づくと顧客満足も4段階に分類されます。

●基本価値・・・ 取引の基本となる不可欠な価値要因
●期待価値・・・ 取引で顧客が当然期待する価値要因
●願望要因・・・ 期待してはいないがあれば高く評価する価値要因
●予想外価値・・・ 期待・願望のレベルを超え、喜び・感動を与える価値要因


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基本価値と期待価値はお客様が取引を通しての対価の代償として当然手に入れられると信じているレベルの価値です。市場で活動していける最低条件がこのレベルです。願望価値、予想外価値を提供できてこそ、はじめて競争上の優位を確保できるのです。
したがって、少なくともこのレベルの価値を提供しなければ顧客を維持していくことはできません。
既存顧客の解約防止をするだけではなく、既存お客様からより多くの商品・サービスを買っていただくには、少なくとも願望価値の提供が必要です。理想としては、予想外価値の提供を行い、より多くの商品やサービスを買っていただくだけではなく、新たなお客様を紹介していただけるようになればベストです。

(4)営業マンの提案力を磨く
 ① 提案型営業とは
  提案型営業とは、お客様が抱える「問題」を明確にした上で、自社の商品がその「解決」にどのように貢献するかを、お客様の「ベネフィット(利益)」とともにお客様に伝える、いわば問題解決型の営業手法です。
かつては、お客様は物質的な豊かさを追い求めていました。商品の所有価値が重視され、商品やサービスを購入すること自体がお客様の喜びであり、目的でした。
しかし現在では、商品を持つことが重要ではなく、商品は、企業におけるさまざまな問題解決のために、すなわち「より安く」「より早く」「より快適に」するために活用する手段に過ぎないのです。
営業マンにとっては、商品を販売することが目的となっていても仕方がないことですが、お客様にとっては、商品の購入自体は決して目的ではないのです。
お客様のニーズも、人並みで形式的なものから、個性的で実質的なものへと様変わりしてきています。お客様は、商品の価値を費用対効果の面からシビアに見極めつつ、「自分仕様」へのこだわりを高めています。また、現在ではお客様の方が豊富で詳細な情報を持っているケースも少なくありません。
また、商品力の差もほとんどなくなってきているため、商品自体による他社との差別化が困難になってきています。
さらに、価格の決定権をお客様が握り始め、適正な利益の確保も難しくなってきています。営業活動の現場では買い手が妥当と考える価格が先にあり、そこから原価を差し引いて残れば利益となるという状況です。
したがって、お客様満足度を高める商品を提供することで他社との差別化を図り、商品の価格決定権を自社が握ることができるような「提案型営業」が不可欠となってきています。
   
 ② 提案型営業のステップ
 
   
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イ) 第1ステップ~お客様との良い関係を作る
  ここが「営業」のスタートであり原点です。お客様がこちらに良い印象を持ち、「この人の話を聞いてみよう」「この人に相談してみよう」という意識を持ってくれなければ、営業のスタートラインに立つことができません。
お客様が警戒心を持ったままで進める商談には、後々大きな落とし穴が待っている場合が多いのです。
良い印象を与えるのはその人が持っている全体的な雰囲気です。分解すると「表情」「身だしなみ」「身のこなし」「言葉遣い」「知識」「技術」などです。
この根本にあるのはその人がお客様に対して「この人のためになることをしたい」という心の中にある意識です。心は必ず表面に出ます。
こちらの持っている意識は相手に伝染します。「お客様が心を開いてくれない」という原因はお客様にあるのではなく、こちらにあるのです。
   
ロ) 第2ステップ~お客様の問題を良く聴く
  お客様の話を良く聞き、何に対して問題を感じているのか、どんなことで困っているのかよく話を聴くことです。この場面では、売り手は聞き手に回らなければなりません。
前述のA君のように会社案内を受注することを目的にしてしまっては、お客様の信頼を得ることはできません。
お客様の信頼を得るためにもお客様の問題や不満を正確にとらえ、お客様と同じ価値観を持ってスタートにつくことです。
後々商談が暗礁に乗り上げたり、問題にぶつかるのはここの段階に手抜きがあるからです。
   
ハ) 第3ステップ~お客様の問題をお客様以上に理解する
  現状が正確に把握できなければ、お客様の信頼を得られる提案はできませんし、ろくに現状も調べずに、一方的な話をしたのでは、その後お客様の信頼を得ることができません。
お客様の真の問題は何なのかを理解する、これが提案型営業における最大のテーマです。しかし、自分の問題や不満に気付いていないお客様もいます。つまり、問題についてはお客様自身が知っている場合と知らない場合があるということです。
お客様が自分の問題に気がついていない場合は知らせてあげて、理解をしてもらい納得させることが重要なポイントです。
お客様の問題をお客様以上にうまく表現して伝えれば、必ずお客様の心は動きます。
   
ニ) 第4ステップ~問題解決策の提示
  お客様の現状や問題点、不満点、心配が正確に把握できたら、問題解決の提案をしなければなりません。そしてその提案内容が、お客様の問題に対する最もよい解決策になっているかを十分に検討する必要があります。
お客様の問題解決策はたくさんあるかもしれません。なぜ今回提示する解決策が一番良いのかを理解してもらう必要があります。
お客様の要望に対してどれだけ応えることが出来るか。ここが重要なポイントになります。また同様のお客様の事例を提示するのも一つの方法です。他のお客様の満足事例はお客様を安心させることにつながります。
また、複数の提案をして、メリット・デメリットを整理してあげることも必要です。そのためには日ごろから自社の扱う商品・サービスの効果、効用を十分理解しておくことが必要です。
ここでポイントとなるのは、決して商品・サービスの内容だけを説明をするのではなく、商品を使用した際に得られる効果を十分に説明することです。
   

3 変動費を削減する

(1)変動費削減のポイントを整理する
変動費は売上に比例して増減しますが、材料費や燃料など外的要因で価格が高騰し売上と関係なく増加するものもあります。調達先を吟味し、条件のよい先への切替えなどを検討しなければなりません。また、社内でも不良在庫の一掃、歩留まりの向上などマイナス要因を除去する取り組みを怠ると、変動費は自然と増加します。
小売業や卸売業の仕入については、販売計画との連動を考慮しないと仕入は膨らむ一方です。仕入担当者は販売計画との整合性や在庫管理責任者、営業責任者と密に連携を取り適正化を進めます。
変動費を1円削減すると、固定費は基本的に変わりませんので、利益がそのまま1円増加することになります。

以下に変動費削減のポイントを挙げます。
① 直接材料費を下げる
② 外注化してコストダウンを図る
③ 外注単価を引き下げる
④ 仕入の適正化
⑤ 値引き・返品の抑制
⑥ 製品構成及び市場編成の改善


(2)直接材料費を下げる
 ① 原材料の調達面におけるコストダウン
イ) 仕入れルートを考える
  たとえば金属製品加工業の仕入れを考えると、金属材料は一般に問屋、商社等から購入します。それも元卸、一次卸、二次卸・・・と多段階になっており、それぞれで値段が異なります。自動車大手企業のように、メーカー直接仕入とはいかないまでも、なるべくメーカーに近い段階の商社から買うのがベストですが、大手卸では少量調達は相手にされません。共同仕入等の工夫が必要です。
また、相見積りをとって仕入業者同士を競わせることも徹底して行うことが必要です。
   
ロ) 国際相場をチェックする
  金属材料は国際相場商品です。相場は変動していますので仕入のつど、価格交渉が必要です。下手をすると、相場が高いときの在庫品をつかまされないとも限りません。
相場が低いときに在庫を積み増しし、高くなったとき放出することで、平均ベースを安くすることが可能です。ただし、長期保存中、さび等で品質劣化の心配があるものは対象とすべきではありません。
   
ハ) より安い材質や規格への転換を考える
  アルミは高いと思っていたが、いつの間にか安くなっていた、という場合があります。
このような場合、より安い材質への転換を考えなければなりませんが、新しい材質の加工費が高くならないかどうかを考えて実施しなければなりません。
低尺の材料を購入し、自社で必要な寸法に裁断している場合、はじめから必要寸法に裁断されているものを購入した方が安くなる場合があります。
コストダウンは、製品1個あたりの総原価が対象であることを忘れてはいけません。
   

 ② 原材料のムダを減らす
  イ) 歩留まりを改善する
  原材料を使用(加工)する場合、発生する「材料のムダ」を少なくすることを考えなければなりません。つまり、「歩留まり」の問題です。
せっかく安く買った原材料も、歩留まりが悪いと、製品1個当たりの材料費が高くなってしまいます。歩留まりの改善には、「材料取り」と「加工ロス」について考えなければなりません。
   
ロ) 材料取りを工夫する
  たとえば、1枚の定尺板から特定の形をした部品を打ち抜く場合を考えて見ます。
次のA図とB図を比較すると、B図(歩留まり率50%)はA図(歩留まり率33%)と比較すると多くの部品を打ち抜くことができることがわかります。
部品を取った後の部分は通常捨てられるか、鉄くずとして安価で売却するかのどちらかになります。
   
 
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ハ) 加工ロスを少なくする
  たとえば、プレス加工では所定の寸法どおりに出来上がるかどうかを見極めるために、生産ロットごとに数個、ときには数10個の試し打ちをします。
微調整をしながら打っていくのですが、「これでよし!」となるまでのものはすべて廃棄されます。ロットサイズが小さいときは、本番より試し打ちの方が多かったというケースも少なくありません。
したがって、試し打ちロスを減らすための工夫が必要となります。
また、加工するときにも原材料のムダが最小限になるような工夫も必要です。s
   

 ③ 購入備品の価額を引き下げる
  イ) 価額交渉を有利にする背景
  価額交渉を有利にする背景には、「相互依存の背景」、「競争の背景」、「内製化の背景」の3つがあります。
「相互依存の背景」とは、お互いに供給・受給関係が崩れると困る、という背景です。系列化もそうですが、一般的には「集中発注方式」です。
たとえば、電気部品なら電気部品すべてを、特定の供給者に発注する方式です。万一、供給・需給関係が崩れると、受給側も困りますが、供給側も売上の"束"がなくなることを心配しなければなりません。そのような背景で、VAなど、徹底的な原価低減活動を協働で行うのです。最も、平和で望ましい背景といえます。
「競争の背景」は、上述とは逆に、常に競争状態にある背景の下で価額交渉をする方式です。一般に「ニ社制」と呼ばれていますが、主力部品のすべてをお互いに競合している二社に発注するのです。通常、発注比率は7対3が良いとされています。"言うことを聞かないと、発注比率を変更しますよ"と無言の脅しをかけて交渉するのです。
「内製化の背景」とは、自社で代替品を生産できる体制をつくることです。設備導入まで行いませんが、試作品を完成させたりして、いつでも必要となれば生産開始できるという背景を作るのです。この方法は、万一の場合には自社生産に踏み切れば良いので、"強い交渉"ができます。
   
ロ) 幅広い調達情報を収集する
  資材担当者は、取引している相手先のみを訪問するのではなく、機会あるごとに取引先の同業他社ともコンタクトをとり、安い代替品がないか、という関連情報を集めることが必要です。
同業他社にとどまらず、他の業界についても関連情報を幅広く収集するよう心がけることです。
さらには、海外の調達市場の探索も必要です。具体的にコストダウンに繋がりそうな情報はサンプルチェックしておきましょう。


(3)外注化してコストダウンを図る
 ① 外注を利用する理由
  外注化、あるいは外注率の引き上げを行った方が良いのは、以下の3つの場合です。
   
  イ) 操業調整
  毎月の販売数量は大なり小なり変動します。小幅な変動に対して在庫で操業調整します。在庫で調整しきれないときは生産調整します。
しかし、増産になったときに設備や人員の増強をすると、減産になったときに余剰になって、設備費や直接労務費のムダが発生します。したがって、自然増・自然減の生産調整は外注したり、外注率を引き上げたりするのが操業変動によるムダを減らす方法です。
   
ロ) 新機種立ち上がり時の暫定体制
  新機種の生産立ち上がり等で新しい工程編成が必要になったとき、新たな設備と人員を投入しなければなりません。しかし、この新機種は長続きするかどうか不安だ、という場合、一旦外注生産で対応し、安定需要の見通しが立った時点で内製に転じる方法があります。
   
ハ) コストメリット
  社内で加工するよりも外注したほうが安い場合は、外注を活用した方が良いのですが、本当に安くなるのかを確認しなければなりません。
   

 ② 外注は本当に安くなるのか
  外注先に支払う加工費と社内加工した場合の加工費を比較して、どちらが安いのか判断します。
ここで注意しなければならないのは、現行の一般的な原価計算では加工費の中に固定費も含まれているということです。したがって、加工費を変動費と固定費に分解してみて、変動費と外注加工費を比較しなければなりません。
その上で、外注の方がコストダウンを図れるのであれば外注を選択することになります。

(4)外注単価を引き下げる
 ① 外注先を選定する
  いくら値段が安くても、品質や納期に問題があるようでは、製品1個あたり総原価を安くすることに寄与しません。Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の視点から外注先を選定すべきです。
また、選定過程で提示される見積りは細かいチェックを要しませんが、外注先として1~2社に絞り込んでから提示してもらう見積書は、その内容を細かくチェックする必要があります。
   
 ② 外注先の見積りをチェックする
  一般に、多くの外注工場は、中小・零細企業です。原価計算や見積り計算も不合理な点が多いのが普通です。
原材料ベース(単位あたり仕入れ価格)がいくらか、どんな機械で加工するか、その場合のチャージレート(加工時間当たりの総合賃率)は適正か、等をチェックできる付属資料を見積書に添付してもらいます。
チェックの結果、割高になっているコストを修正してもらうのは当然ですが、逆に安すぎる側に間違っている場合も修正が必要です。間違ったままにしておくと、生産開始後に「赤字なので返上したい」と一方的に注文返上されかねません。
社内加工のチェックと同じスタンスで臨むのが、結局は良い結果をもたらします。
   
 ③ 外注指導が重要
  外注工場は社内工程に比較して、色々な点でムダが多いのが普通です。積極的に厳しく改善指導をして、まず外注工場の採算性を良くした上で、値下げという形で還元してもらう体制が良いといえます。「ムチ」だけではコストダウンの成果は上がりません。外注先との「WIN-WIN」の関係を築くことが重要です。
   

(5)仕入の適正化
商品仕入は、売上の季節変動に伴う在庫増減を考慮した上で、仕入予算を立てる必要があります。
繁忙期には在庫を増加させ販売ロスを減らし、閑散期には在庫を削減する予算とすることが必要です。
在庫増減を考慮した仕入予算は、
仕入予算=売上原価予算±在庫増減
で計算します。これによって自動的に在庫予算も設定されることになります。
なお、季節変動が少ない企業の場合は、在庫増減を考慮しなくても差し支えありません。
また、企業によっては仕入の際のルールが明確になっておらず、ベテラン営業マンが仕入を代行しているケースも少なくありません。
この場合は注意が必要で、営業マンは販売ロスを避けるためにできるだけ多くの在庫を持とうとします。また、まとめて買うと1個あたりの仕入単価が下がるからといって必要のないものまで仕入する傾向もあります。
適正期間で完売できるのであればそれも仕入戦略の一つとなりますが、1ヶ月で販売可能な量を考慮し、安く仕入れることでコストダウンできる金額と、在庫として抱えることによって発生するコストを比較して判断しなければなりません。
また、すぐ販売できない在庫を持つということは、それだけ資金を必要としますので、資金繰りにも影響を与えますので注意が必要です。

(6)値引き・返品の抑制
値引き・返品を抑制することは、適正売価の維持につながり限界利益を向上させます。
値引きはそのまま利益の減少に直結します。売上高経常利益率が2%であった場合、仮にすべての商品を2%の値引きを行なうと、利益はゼロになってしまいます。逆に固定費は変動しませんので、値引きが1ポイント減少すれば経常利益は1ポイント向上することになります。
値引きの抑制が限界利益に与える影響の大きさを全社に植えつけなければなりません。
返品については、商品が戻ってくるため、それが正規の値段で販売できれば値引きほどの影響はないものの、物流コストや在庫コストが余計にかかります。加えて、返品商品が当初の値段で販売できない場合が多いことを考慮すれば、値引きと同様に影響が大きくなります。
いずれにしても、値引き・返品の現状を正しく把握して改善策を明確にすることが重要です。

(7)製品構成及び市場編成の改善
   売上高は変わらなくとも、利益率の高い商品にウェイトをかけた製品構成に変えることによって限界利益率を高めることができます。もちろん、市場編成を変更することでも同じような効果を挙げることができます。
営業マンは売り安い商品を売ろうとする傾向が強いものです。売り安い商品と利益が取れる商品は自ずと異なりますので、会社として製品の利益率や販売方針などの観点から重点商品や商品構成比率を決めておくことが望ましい姿です。

 ① プロダクトミックスで限界利益が変わる
  企業では限界利益率の異なる複数の製品を扱っています。通常は製品の構成割合、すなわちプロダクトミックスは一定という仮定のもとに全社平均の限界利益率を用いて損益分岐点分析を行います。
しかし、プロダクトミックスが変われば限界利益率も変わります。そこで、収益性を高める上から、限界利益率を最も高くするプロダクトミックスを戦略として取り入れることが求められます。
   
  【事例】
  D社は以下のA、B、Cの3商品を販売しています。それぞれの売上構成比率および限界利益率は以下の通りであったとすると、全社の限界利益率はABCの加重平均により20.5%と計算できます。
   
    売上構成比 限界利益率 加重平均
    A  50%    20%    10.0%
    B  30%    25%     7.5%
    C  20%    15%     3.0%
    計 100%           20.5%

   
  このD社が限界利益率の高いB商品の販売ウェイトを高め、40%とし、A商品の売上構成比率を40%に引き下げたとすると、全体の限界利益率は以下のように21.0%となります。
   
    売上構成比 限界利益率 加重平均
    A  40%    20%     8.0%
    B  40%    25%    10.0%
    C  20%    15%     3.0%
    計 100%           21.0%

   
 ② 制約条件下におけるプロダクトミックスの考え方
  限界利益率の高い製品を重点的に生産するといっても、無限大に生産・販売できるわけではありません。販売市場の制約によって売上高に限界があり、生産設備や労働力等の制約によって生産量にも限界があるからです。
その場合は、制約条件の単位あたりの貢献利益が大きい製品を生産することで有利な意思決定ができます。たとえば、需要が大きい機械設備の生産可能な数量を超えている場合には、機械の使用1時間足りの貢献利益の大きい製品を生産することによって、より大きな利益を獲得することができます。


4 緊急対策として固定費を削減する

(1)固定費の増加要因を検証する
企業の経費を「変動費」と「固定費」に分けて考えたとき、変動費は仕入先や外注先があるため、なかなか自社の思うとおりにいかない場合が多いのですが、固定費は自社の意思で相当削減することが可能です。
固定費の削減では、増加した科目を精査し、増加の要因に妥当性があるか検討しなければなりません。なぜなら、固定費はすべて圧縮すべきものではなく、戦略的経費は削減するものではないからです。
人件費は適正な労働分配率の範囲内にあるかを見ます。また、政策的に人材を採用した場合は生産性が向上したかを確認します。研究開発費など将来の利益確保に向けてかけるべき費用(利益貢献経費)についても妥当性を吟味します。唯一圧縮して良い固定費は節減可能費としてとらえ、可能な限り圧縮させることです。

(2)人件費の削減
労働分配率(総額人件費が限界利益に占める割合)は一定以下でなければなりません。決算書診断において、同業他社よりも労働分配率が高い企業は、一人当たりの人件費が高いか、社員数が多いかのどちらかになりますので、自社に合った人件費の削減をしていきます。

 ① 一人当たりの人件費が高い企業
  一人当たりの人件費が高い企業は、諸手当の見直し、賃金水準の見直し、賞与支給方法の見直し等を行い、総額人件費をコントロールして労働分配率を適正値に保ちます。
しかし、単に賞与を削減するだけでは、社員のモチーベーションの低下を招きますので、決算賞与を導入してモチベーションが低下しないようにすることも重要です。
   
 ② 社員数が多い企業
  社員数が多い企業は、どの部門で余剰人員が生じているのかをまず確認します。
そして、その部門の将来見込みを考え、回復の兆しがなければ部門閉鎖を検討します。
そこで生じた余剰人員は、他部門への異動で売り上げ増が見込めるのであれば、異動させて経営資源を有効活用すればよいことになりますが、見込めない場合は人員削減を洗濯しなければなりません。
この場合、人件費は経営計画の中において、あらかじめ「人件費削減計画」として織り込みます。次に人件費削減の金額ベースから、削減人数を算出します。さらに、それを部門別、階層別に落とし込み、削減計画をより具体化します。
次に、人材検討表を作成し、個別に評価します。つまり、貢献度や今後の成長度などを評価し、総合的に判断して今後会社に必要な人材かどうかを検討するのです。そして、いよいよ個別に告知を行い、折衝に入りますが、根気よく退職の勧奨説得を続けることです。その後、人材のバランスを見ながら組織を見直すことになります。
ここで、注意をしなければならないのは、退職を勧奨する場合の条件として、退職金の割増を提示するのが一般的ですで、原資の確保が必要になることです。また、企業として、解雇対象者の再就職の斡旋努力も必要です。
「希望退職」を安易に募集する会社がありますが、会社にとって必要な人材までもが退職を希望する可能性が十分あり、会社にとって人件費の削減以上の損失となるので、熟考した上で実施すべきです。
   
  【人件費削減の具体例】
  ●従来業務を見直し、非正社員化をする
 (派遣社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託など)
●IT化による人員削減(会計ソフト導入による事務員削減など)
●人時生産性を見直し、効率的なシフト管理の推進
● 計画的な行動管理による時間外手当の削減
   
(3)家賃の削減
人件費の次に、大きなものとして家賃があります。家賃は、不変の固定的経費であると考えて最初から手が付けられないとあきらめている場合があります。
外部への影響も多少考えなければなりませんが、影響が現れないように行うことは可能です。営業所の統廃合などによって経費削減を行うことが、将来会社に莫大な利益を与えることを考えると、多少の影響は取るに足りません。

【家賃削減の具体例】 ●営業所の統廃合による拠点削減
●より安価な家賃の物件へ本社ビル移転
●自社ビルをテナント化し家賃収入を得る

(4)広告宣伝費のコストパフォーマンスを考える
宣伝費は、コストパフォーマンスを充分考えた上で支出されるべきです。むやみやたらに、売上増加という「錦の御旗」のもとに湯水のごとく宣伝費を使った時代は終わりました。また、コストパフォーマンスを無視した、イメージ広告に支出するケースもありますが当面止めるべきです。

【広告宣伝費削減の具体例】
●安易に割引券発行をしない
●無料のパブリシティへの記事掲載
逆にホームページについては、魅力あるものをつくり、検索エンジンへの登録や相互リンクの実施など地道な積み上げも欠かせないものになっています。

(5)接待・交際費は管理表で絞り込む
接待・交際費も広告宣伝費と同様に費用対効果を充分考えて支出すべき費用です。交際費管理表を作成し、絞り込むことが必要です。この場合にも、ベースは年単位で考えますが月単位に落とし込んで管理します。
接待・交際費は経営戦略上必要な経費ですが、各部門に予算として割り当てた場合、それが既得権となってしまい、予算一杯まで使い切るという考えを持った社員が出てくることも考えられます。事前承認制度を導入して、費用対効果を見ながら支出を判断することが必要です。

【接待・交際費削減の具体例】
●前期実績の中で売上貢献度合いが最も低く見込みが無い取引先は今期削減
●事前申請制度による無駄使いの監視

(6)営業部門にコスト削減を浸透させる
営業部門が新規顧客開拓のためのコストは必要であり、経費削減を上から押し付けると、新規顧客開拓が思うように進まないこともあり得ます。ここでも、費用対効果の意識を浸透させることが非常に重要になります。
また、費用の削減もさることながら、時間というコストに対する意識を高めさせることが重要です。一度で済む納品を数回に分けて納品することの無駄や、やり直し、クレーム発生といったとことにもコストがかかることを認識させなければなりません。

【コスト削減意識を浸透させるための具体例】
●営業部門に対する社内研修(利益の仕組みなど)
●業務管理、進捗管理、行動管理の徹底

(7)その他経費
たとえばインターネットを活用をすると、使用量に関係なく定額の契約であれば、使えば使うほど相対的にコストが下がります。また、気を付けたいのが、教育・研修費です。将来に向けての投資なので、単純に削減することはできません。水道光熱費の削減は、昔から「経費削減」というと必ず挙げられる代表選手です。しかし、その意義は「経費削減」そのものより、全社で取り組むにあたり、共通認識としての取組み項目として分かりやすく、取組み実感の湧くものであるからです。全社員の共通の認識から「節約」に対する意識を醸成できるのです。
ただ、この場合、気をつけなければならないのは、徹底することの必要性を幹部が認識しなければ意味がないということです。「自分ひとりがやらなくても良い」という意識は簡単に蔓延します。幹部ができないものを部下がやるはずがありません。
同様のことが事務費・消耗品費の削減にも言えます。これも、公共料金と並んで真っ先に名前の挙がるところです。
また、業務の見直しから、人件費の削減に結びつく場合もあるので、業務の見直しは重要です。その中から、削減するもの、購入を中止するもの等が明らかになります。

【その他経費削減の具体例】
●高速道路利用規定を整備し利用条件を設定
 (本社から50Km圏内への移動は高速道路使用禁止など)
● 社用車をリース車や自家用車借上げ方式への切り替え
●教育研修費の助成金活用
●ミスコピーの裏紙活用
●制服の廃止
●会社契約の携帯電話を廃止し、個人への一定額料金補助方式へ変更